常位胎盤早期剥離は母子ともに危険な病気

常位胎盤早期剥離とは?

 常位胎盤早期剥離(略して早剥(そうはく))は、子宮内に赤ちゃんがいる状態で胎盤が剥がれる病気です。胎盤はへその緒を通して赤ちゃんに酸素を与える役割をもっています。胎盤が剥がれると赤ちゃんは酸欠になってしまいます。

常位胎盤早期剥離の症状は?

早剥の主な症状は性器出血、腹痛、胎動減少です。性器出血は胎盤が剥離することで胎盤に行くはずの血液が子宮外に流れ出ることで起こります。腹痛は子宮内に血液が貯留し子宮を圧迫することで起こります。この時、子宮は板のように固くなり持続的な張りが続きます。また赤ちゃんの胎動は酸欠状態が続くと減少します。

 これらの症状は必ず3つすべて起こるわけではありません。性器出血がない場合や、腹痛がない場合も存在します。また胎盤の剥がれる割合によって赤ちゃんの危険度が変わります。早剥が起こっても剥離部位が小さければ赤ちゃんに影響を及ぼさないこともあります。

早剥の張りは持続的な張り

 早剥の張りは通常の張りとは違い、持続的な張りであることが多いとされています。通常の張りは継続時間が2.3分であるのに対し、早剥の張りは下のように長時間継続するイメージです。

常位胎盤早期剥離は母子ともに危険な病気

 胎盤が剥がれると酸欠が進み、最悪赤ちゃんが命を落とす可能性もあります。早剥が起こってから、赤ちゃんを救出できるゴールデンタイムは3時間と言われており、緊急で対応する必要があります。

 また早剥はお母さんをDIC(播種性血管内凝固症候群)という状態にします。DICとは血液が固まらなくなる病気です。分娩前に胎盤が剥がれると羊水や胎盤中の特殊な因子がお母さんの血液に作用します。すると、血液を固まらせる物質が急速に減少し、血液の凝固能(かさぶたをつく能力)が激減します。それによりお母さんは出血が止まらなくなり、大量出血により亡くなってしまう可能性があります。

常位胎盤早期剥離になりやすい人は?

 このように常位胎盤早期剥離は恐ろしい病気ですが、腹部に衝撃を受けることによって起こる外傷性の常位胎盤早期剥離胎盤以外、早剥の原因はわかっていません。常位胎盤早期剥離は誰にでも起こりうる病気なのです。

 ただ、常位胎盤早期剥離が起こりやすい条件はわかっています。以下のような方は注意が必要です。

   ・母体が高齢

   ・ 高血圧

   ・ 子宮内感染

   ・ 常位胎盤早期剥離の既往

   ・ 腹部外傷(受傷後48時間以内)

   ・ 喫煙

常位胎盤早期剥離が起こりやすい週数は?

 早剥はどの週数でも起こりますが、25週前後が最も起こりやすいとされています。

常位胎盤早期剥離への対応は?

 早剥により胎児が危険にさらされている場合、緊急で帝王切開を行います。胎児救命のゴールデンタイムは3時間ですので、通常より緊急な対応を行う超緊急帝王切開を行うこともあります。ただ母体がすでにDICに陥っている場合、手術によりさらに出血量が増える可能性があるため、すぐに手術ができない場合もあります。その場合は輸血などでDICを改善してから帝王切開を行います。

 胎盤の剥がれた部位が小さい場合などは胎児に大きな影響を及ぼさないこともありますが、慎重に経過観察が必要な上、今後さらに剥離が進む可能性もあるため、結局は帝王切開が必要になることが多いです。

常位胎盤早期剥離にすぐ気が付くには

 常位胎盤早期剥離は誰にでも起こる恐い病気ですが、予防法はありません。よって、早剥が起こってしまった場合に少しでも早く気が付くことが大切です。

そのためにはまず常位胎盤早期剝離という病気の存在を知ることが大事です。その上で、妊娠18週以降の性器出血や、持続的な痛みを伴う張りが続いた場合、すぐに医療機関に相談する。動減少を感じたら、胎動カウントなどを行うなどの対応を行いましょう。

まとめ

 この投稿では常位胎盤早期剝離についてまとめました。常位胎盤早期剝離は赤ちゃんが子宮の中にいる状態で胎盤が剥がれてしまう病気です。赤ちゃんは酸欠で、お母さんはDICで命に関わる怖い病気です。早剝を予防する方法はないため、常位胎盤早期剝離を疑う症状が出現した場合は素早く医療機関に相談することが大切です。常位胎盤早期剝離の症状は、妊娠18週以降の赤い性器出血、持続的な痛みを伴う張り、胎動減少などです。これらの症状が起こったからといって絶対常位胎盤早期剝離というわけではありませんが、念のため医療機関には相談しましょう。

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