現役産婦人科医が解説 妊婦さんにもわかるNSTモニターの見方

この記事では、誰でもわかるくらい簡単にNSTモニターの見方について説明します。

NSTモニターとは

 NSTモニターとは、Non stress test monitorの略です。CTGや略してモニターとも言われます。妊娠36週以降の妊婦健診や張りが強く受診した時に行われることがあります。

 お腹に子宮収縮を見るベルトと、胎児心拍を見るベルトを2本巻いて横になり20-40分程度測定します。

NSTモニターは、胎児心拍と子宮収縮の測定機械

 NSTモニターで測定するのは胎児の1分間の心拍数と張りです。

NSTの画面は主に2種類あります。

 ①下図のように心電図な線が記載され、胎児心拍と張り具合が時間経過でわかる記録用紙

 ②胎児心拍と張りが数値で表示してある画面 (左側の赤い数字=胎児心拍、右側の緑の数字=子宮収縮)

https://www.atomed.co.jp/product/cat_obstetrics/028.htmlより

子宮収縮は下に書いてある線

 まず子宮収縮の見方から説明します。

 ②の画面では右側の緑の数値が張りを表しています。この数値は0が全く張っていない。というわけではないので気を付けてください。張っていない時の数値は、実はベルトの装着になどで微妙に変わったりします。大事なのは、数値の変化です。もともと5だったのが、30や40などに増えたら張っているということです。

 ①の記録用紙では、下の線が張りです。この用紙では張りがあると下のように山ができます。山ができている時は張っています。

 山の頂点と頂点の間隔を計ることで陣痛の周期がわかります。10分に1回程度張っており、痛みが強くなっているのであれば陣痛かもしれません。

胎児心拍の見方

 胎児心拍は、②の画面ではHR(Heart rate)として記載されています。これは1分間に赤ちゃんの心臓が拍動数する回数を表しています。胎児の心拍数は大人より早く1分間に110~160回が正常範囲内です。

 ①の記録用紙では上の線が胎児心拍数にあたります。縦に書いてある数値が一分間の胎児心拍数です最近では正常範囲ないである110~160bpmに色がついている用紙もあります。胎児心拍数の大部分が110-160の間にあればokです。少しくらい上や下に出るのは全然かまいません。あくまで、全体の平均が間に入っていれば大丈夫です。

NSTモニターは「赤ちゃんが元気であること」を確認するために機械。

 NSTモニターでわかるのは、「赤ちゃんが元気であること」です。「NSTモニターで、ある条件を満たすことが確認できると、その赤ちゃんは1週間以内に死産になる確率は0.2-0.62%である。」というデータがあります。つまり、NSTモニターが問題なければ、その赤ちゃんはほぼ元気ということになります。もちろん100%ではありませんが、かなり安心できるということになります。

「赤ちゃんが元気であること」が条件とは

 ではその条件が何なのか、これから説明していきますが、ここから先はかなり難しい内容になります。とても詳しく書くとNSTモニターの読み方だけで1冊本が書けます。ので、とりあえず読んでみてわからない方は、「モニターをとって先生に大丈夫と言われたらかなり安心なんだな」ということだけわかっていただければ大丈夫です。

 その条件とは

1.心拍数基線110~160bpm

2.基線細変動正常

3.一過性頻脈を20分間に 2 回以上認める(reactive pattern)

4.一過性徐脈を認めない

 の4つになります。では一つずつ説明していきます。

心拍数基線110~160回/分

 心拍数基線とは簡単にいうと心拍数の平均値です。この値が110~160の間にあればokです。

基線再変動正常

 これは少しわかりにくいのですが、図のような心拍数基線の揺れ(ギザギザ)です。基線再変動がない状態と見比べてみるとわかりやすいですが、上のように小さなギザギザがあれば大丈夫です。

一過性頻脈を20分間に 2 回以上認める

 一過性頻脈とは赤ちゃんが元気なときに見られる一時的な頻脈です。これが20分間に2回あれば大丈夫です。

一過性徐脈を認めない

 一過性徐脈は一時的な徐脈です。下の図のように心拍数が大きく下に下がったら徐脈です。この一過性徐脈がないことが条件です。

 この辺りはかなりかみ砕いてはいますが、専門家でも見間違えることもあり、難しい範囲になります。ですので、だいたいわかっていただければ大丈夫です。ここをなんとなくでも読まれた方は、あともう一つNSTで大事なことを書きますので、読んで行ってください。

条件を満たさない=「赤ちゃんが元気じゃない」ではない。

 前述で、上の4つの条件を満たせば「赤ちゃんが元気であること」を保証できると説明しました。しかし、ここで大事なことは、条件を満たさない=「赤ちゃんが元気じゃない」ではないということです。

4つの条件を満たさなくても赤ちゃんが元気なケースは多々あります。むしろその方が多いといっても過言ではありません。例えば赤ちゃんがお腹の中で寝ている時には、基線再変動は減りますし、一過性徐脈も起こりにくくなります。ですので、モニターで4つの条件を満たさなくても必ずしも焦らなくて大丈夫です。

 4つの条件以外の判別はさらに複雑になりますし、医師の中でも判断がわかれることもあります。またNST自体にも限界があります。独自のケースは担当の医師か助産師の評価を待ってください。

まとめ NSTは「赤ちゃんが元気であること」を確認する機械

 以上のようにNSTモニターは4つの条件を満たせば、赤ちゃんが元気であることがほぼ保証される検査ですので、多くの医療機関で使用されています。ただNSTモニター自体にも限界があり、解釈についても難しく医療スタッフでも詳細は分かっていない方も多いです。4つの条件を満たしているのを自分で確認出来たらラッキーくらいの気持ちで、自分で確認できなくても不安にならないよう、くれぐれもお願いします。

コメント

タイトルとURLをコピーしました