胎盤が低い(低置胎盤)と言われたら

 この記事では、健診で「胎盤の位置が低い(低置胎盤)」と言われた方へ、その状態や対応について説明します。

胎盤が低い(低置胎盤)とは?

 低置胎盤とは胎盤が子宮の出口(将来の産道)の近くにある状態です。同じような病気に前置胎盤という病気があります。図のように前置胎盤は産道をふさぐように胎盤が付着している状態です。低値胎盤は産道にはかかりませんが、産道の近くに胎盤が付着している状態です。

低置胎盤の原因は?

 胎盤は受精卵が着床した場所にできます。よって、受精卵が子宮の出口近くに付着した場合、誰でも低値胎盤になる可能性があります。子宮の中にダメージを与えるような手術や高齢妊娠などで低値胎盤の割合が増えることはわかっていますが、全員が低置胎盤になるわけではありません。また21トリソミー(ダウン症)などの染色体異常など胎児側の原因は低置胎盤の原因になる可能性はほとんどないと考えていいでしょう。

低置胎盤の症状は性器出血

 低置胎盤の症状は警告出血と呼ばれる疼痛のない赤い性器出血です。警告出血の特徴は出血が何度も繰り返されることと、回数を重ねるごとに出血量が多くなることです。出血が大量になると母児が危険にさらされる可能性があります。低置胎盤や前置胎盤といわれた方で性器出血した方はすぐに病院に連絡しましょう。出血を繰り返す場合や出血量が多い場合は入院して経過観察することもあります。

胎児への影響はほぼありません。

 症状がない低置胎盤は、基本的には胎児の成長などには影響を与えません。また低置胎盤からの出血はお母さんの出血ですので、少量の出血であれば胎児は問題ないことが多いです。しかし出血が大量の場合や、常位胎盤早期剝離(胎盤がお腹の中ではがれてしまう病気)などの場合には胎児にも影響が出ることがあります。ですので、やはり出血がある場合は直ちに病院に連絡しましょう。

低置胎盤と言われた場合の生活(性生活、運動、仕事など)

 低置胎盤の方は出血のリスクがあるため、性交渉はNGです。またお腹の張りも出血につながる可能性があるため、なるべく張りが起こらないような生活を送りましょう。よって、運動なども基本的には避けた方がいいでしょう。もし行うとしても張りがあるならすぐやめるべきです。仕事に関しても張りが誘発される立ち仕事などの体を使う仕事はなるべく避けた方が安全だと思われます。

 もし働いている方で低置胎盤を指摘された方は、体への負担の少ない職場への異動などを会社と相談することをお勧めします。職場との交渉には母健連絡カードなどが便利です。母健連絡カードの詳細はリンク先をご参照ください。

満期まで低置胎盤が治らない場合は帝王切開が必要になる。

 低置胎盤のまま下からお産すると、大出血を起こす可能性があります。場合によっては2-3L以上の大量出血を起こす方もいます。大量出血に対しては最初は水分を補う点滴で対応しますが、出血量が多い場合は輸血を行います。輸血を行いながら様々な止血処置を行いますが、万が一止血できない場合、お母さんの命を守る最終手段として子宮摘出を行う場合もあります

 上記のような出血リスクがあるため、低値置盤は通常帝王切開での分娩となります。しかし帝王切開でも大量出血となる可能性はあるため、自己血貯血といって自分の血を分娩前に貯める処置を行う場合もあります。また大学病院などの複合施設では、内腸骨バルーンという風船を子宮に流れ込む血管の中で膨らませることで血流を遮断しながら手術するという方法もあります。

妊娠20週周辺の低置胎盤は治る可能性がある

 低置胎盤は、妊娠20週前後の健診で見つかります。しかし低置胎盤は妊娠20週で指摘されたとしても、胎児発育に伴い子宮が大きくなることで胎盤が上に移動し治る場合が多いです。よって、最終的に低置胎盤と診断されるのは、妊娠30週を過ぎてからです。

 妊娠20週前後で指摘された方は焦らず、妊娠30週前後での診察を待ちましょう。

まとめ

 この投稿では、低置胎盤について説明しました。低置胎盤は将来の産道の近くに胎盤が付着している状態です。症状は警告出血と言われる性器出血です。もし出血したらすぐに病院に連絡しましょう。満期近くになっても低置胎盤が続く場合は帝王切開が必要です。低置胎盤は大量出血を起こしやすいため、自己血輸血などの特別な準備をして手術に臨む場合もあります。

 妊娠20週前後に指摘された低置胎盤は治ることが多いです。あわてずに妊娠30週前後でもう一度胎盤の位置を確認してもらいましょう。

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